幼少時代に”あること”をされると、賢くて、社会性があり、自己コントロールがうまく、健康で長生き、そしてストレスにも強く、勇敢で環境に適応するのもうまい大人になるということがわかりました。
あることとは、、、?
まずは、マギル大学のマイケルミーニーという神経科学者のラットを使った研究を紹介します。この実験ではラットが使われましたが、人間とラットの脳は似ているので、人間にも似たようなことが起きるだろうといわれています。
さて、先程から何度も出てくる”あること”とは「毛づくろいをする」「体を舐める」ことです。
親のラットにはよく毛づくろいをするラットとそうでないラットがいます。その子供のラットが大人になった時に様々なテストを行なって、能力を比較しました。
実験1
ラットを広くて丸い、仕切りのない空間に5分間入れ、彼らの行動を観察します。オープンフィールドテストと呼ばれ、動物科学では一般的な実験です。
このような場所に入れられると、神経質なラットはずっと壁の近くにいますが、勇敢なラットは壁から離れて全体を探索しに行くことができます。
たくさん毛繕いされたラットは、毛繕いされなかったラットの7倍の時間を円の中央で探索することができました。
実験2
空腹のラットを新しいケージに入れて食べ物を与え、様子を観察します。
すると、たくさん毛繕いされたラットは、毛繕いされなかったラットの2分の1の時間で食べ物に手を出すことができた。
つまり、毛繕いされなかったラットは新しい環境ではビクビクして行動するのに時間がかかるといえます。
他にも、たくさん毛繕いされたラットは「迷路を抜けるのもうまい」「社会性がある」「自己コントロールが効く」「健康で長生き」という研究結果もでています。
また、さらに脳を詳しく調べてみると、たくさん毛繕いされたラットはストレスに対処する脳の部位が大きくより複雑になっていました。つまりストレスに強いラットになったといえます。
遺伝子は関係するの?
ここで、「どうせもともといい遺伝子を持っていた(このような性質をもっていた)んじゃないの?」という疑問が出てくると思いますが、答えはNOです。
毛づくろいをする親と毛づくろいをしない親を交換することで純粋に幼少期に毛繕いされた経験がどう影響するか調べた実験があります。
結果は、どんな遺伝子を持った子どもでも、幼少期に毛繕いされたラットは勇敢で大胆に育ち、環境にもうまく適応できたことがわかりました。
人間を対象とした研究
ここまでラットを用いた実験を紹介しましたが、人間を対象とした研究もあります。
12000人強の幼児を対象に、ストレスへ対応する能力を毎年計測する、というニューヨーク大学の研究です。
この研究により、ストレス対応能力は、家庭内の騒動や混乱によって下がるということがわかりました。ただし、母親がしっかり反応してあげている環境であれば、子どものストレス対応能力は下がらないということもわかりました。
つまり、子どもは多少厳しい環境におかれていても、母親がよく関わっていれば、しっかり育つということがいえます。
この研究では母親が対象となりましたが、父親も子どもにしっかり関わることで、子どものストレス対応能力が高まるのではないかと考えられます。
ぜひ、ママもパパも子どもにスキンシップ(毛繕い)をしてよく関わってあげてください!